この記事も含めて、インターネット上に何かしらの言語を用いてテキストを残している人々は、多かれ少なかれ自らが作成したテキストに責任を持っています。「自分が制御出来ない部分を可能な限り持ちたくない」とも言えるかもしれません。
2026年1月13日、メディアプラットフォーム「note」は公式記事及びプレスリリースにおいて、 「日本語で書かれたコンテンツを世界中の読者に届ける自動の多言語対応の試験運用」を開始すると発表 しました。この記事ではその概要と関連した情報を簡単にまとめます。
結論
- メディアプラットフォーム「note」がテキストの自動翻訳機能を発表
- 2026年2月から、オプトイン形式でスタート
- 情報共有コミュニティ「Zenn」が1月9日に同様の機能を発表し、問題点がX上などで指摘される中でのリリース
noteでテキストの自動翻訳機能がオプトインで使用可能に
noteは公式記事において、「note、コンテンツのグローバル展開を開始。自動の多言語対応で、日本からの発信を世界に届けます」と題したプレスリリースを、1月13日の午前11時に公開しました。この記事においては2026年2月からオプトイン形式で行う「日本語で書かれたコンテンツを世界中の読者に届ける自動の多言語対応の試験運用」に関する情報がまとめられています。

ここにおける「自動の多言語対応の試験運用」は、日本語で書かれたテキストに対して行われる自動翻訳であり、Googleの生成AI等を活用するとのことです。当面は日本語で書かれたテキストを英語にする機能のみの提供ですが、将来的には別の言語への翻訳を行う可能性が示されています。
この機能はオプトイン形式で提供され、 クリエイターがオンにしない限り自動翻訳は行われない とのことです。現状は無料記事のテキストに対してのみ行うものとされており、画像、音声・動画コンテンツ及びテキストコンテンツの中でも有料記事やメンバーシップ特典記事は対象外となっています。
2026年2月から試験的に運用が開始される予定であり、また、この取り組みに関心のあるクリエイターや企業の担当者は、こちらのフォームから申し込むことで先行して利用することが可能となっています。フォームによれば一旦申し込んだ後に自動翻訳機能をオフにする(先行利用の申し込みを取り消す)ことは出来ないものとされている他、翻訳元のコンテンツを削除したとしても一定期間生成済みの翻訳後のコンテンツが残存する可能性が示されています。
noteによれば、この機能は日本の暮らしや仕事のスタイル・価値観を伝えるテキストコンテンツが、言語の壁によって届いていない現状を改善するために行うとのことです。CEOによればnoteを使用しているクリエイターの一部から、このような機能を求める声は以前から存在したとのことで、「自分のアイデアや作品を広く届けたい」というクリエイターの願いに対する施策の1つであるとしています。
Zennが「記事の英語版生成の実験的な提供」を開始した4日後に
このプレスリリースは、クラスメソッドが運営する情報共有コミュニティ「Zenn」が「記事の英語版生成の実験的な提供」を開始した4日後に行われたものです。Zennのリリースした機能はnoteが発表した機能とほぼ同様の機能であり、自動的に有効になったという違いがあったものの、Zennの著者が海外のユーザーへリーチすることを目的としたものでした。Zennのこの機能に関して、クリエイター側の反応は様々なものでした。
日本人以外にZennユーザーがいないことを指摘する声や機械翻訳のクオリティの低さを懸念する意見がありました。一方、規約にこのような「加工」を認める条項が無いことを指摘するものであったり、既に英語版を他の媒体で公開していることとの兼ね合いや修正可能か否かが不明であることを問題視するものといった、否定的な意見も目立ちました。またこれを機に記事をなぜ書いているのかを整理する方や、日本語で書かれた技術的資料や日本語圏で開発されたOSSのリーチ不足について懸念を示す方もいらっしゃいました。
様々な意見に対応する形で、Zennは英語版生成の提供を開始した翌日の10日に、オプトイン形式での提供に変更しました。
記事の英語版生成のデフォルト設定を「有効」としていたことについて、多くのご意見をいただきました。ユーザーの皆様にご不安とご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
— Zenn公式 (@zenn_dev) January 9, 2026
ご指摘を受け、デフォルト設定および全ユーザーの設定を「無効」に変更いたしました(オプトイン方式)。… https://t.co/XIIrqobUSk
noteはこのような議論が行われた4日後にほぼ同様の機能をオプトイン形式でリリースしたこととなります。構造としてはZennの機能と同様の議論が存在するものといえます。
関連リンク
- note、コンテンツのグローバル展開を開始。自動の多言語対応で、日本からの発信を世界に届けます - note株式会社
- note、コンテンツのグローバル展開を開始 - note株式会社のプレスリリース
最後に
前回の技術に関する記事: Claudeの有料プランユーザー向けに、25年の年末は使用制限が2倍になるキャンペーン
「読み手側によって自動翻訳機能を用いて文章が読まれるということと、作り手側が自動翻訳機能を用いて異なる言語の文章を用意しておく」ということは、一見同様の構造に見えますが異なるものであると私は考えます。前者においてはユーザーが勝手に行っていることですが、自動翻訳機能を作り手が用意することは生成されたテキストに対して一定の責任を持つ(文責を負う)こととなるのではないでしょうか。またプラットフォーム側が適切な同意を書き手に対して行わずに自動翻訳機能を提供すれば、同一性保持権侵害を訴えられかねないものではないかと思います。
一方で、言語が異なることによって検索エンジン等からのリーチが異なるというのは、生成AI等が発達し「言語の壁」が無くなった/低くなったように見える現在において、ある種不思議な課題といえます。これを改善する手法はあるのでしょうか。
個人的には、今日検索エンジンと生成AIを組み合わせた「RAG」が情報収集の一形態として定着しつつあるように思えます。noteやZennがリリースした、このような作り手が責任を負えない機能に頼らずとも、世界の様々なWebサイトを見るようにするために読み手側が出来る数少ないこととしては、プロンプトに「必要があれば日本語と英語のみならず、中国語やスペイン語などでの検索を行うこと」といったテキストを追加することが考えられます。あまり本質的ではないですが、これくらいしかユーザー側に出来ることはないのではないかと思います。
令和の世においてどのようにしてコンテンツと出会ってもらえるかは、今後とも読み手・作り手双方を巻き込んで議論されることになるかと思います。今後ともこの Osumi Akari.jp を管理するものとして(?)考えていければと思います。